英語発音の奥深い世界 ― 「英語らしさ」の秘密

英語の発音がなかなかうまくならないんだけど、どうしたらいい?

多くの学習者がつまずきやすいポイントを紹介するね!

英語の発音は、単に「カタカナにない音を真似する」だけでは到達できません。

舌・唇・喉・声の強弱といった複雑な動作が連動し、音の流れ・長さ・リズムを生み出します。

さらに英語は「音声変化」や「強弱リズム」が顕著で、日本語とは根本的に構造が異なります。

この記事では、英語音声学(phonetics)・音韻論(phonology)の知見をもとに、7つの発音の秘密を解説します。

発音を理論と感覚の両面から理解することで、あなたのリスニング・スピーキングの精度は格段に上がります。

こんな人におすすめ!

何となく英語の発音を練習している人

英語の発音をより専門的に知りたい人

スピーキングの力を上げたい人

リスニングの力を上げたい人

目次

1. 「R」と「L」の違いは舌先だけじゃない

英語学習者が必ずつまずく /ɹ/(R音)と /l/(L音)。
学校の英語では「Rは巻き舌、Lは舌先を歯茎につける」と説明されますが、実際はもっと複雑です。

R音(/ɹ/)の特徴
– 舌先は上の歯茎に触れない
– 舌全体を奥に引く
– 舌の中央がくぼみ、音が後方で共鳴する
– 唇を軽く丸める

L音(/l/)の特徴
– 舌先が歯茎に触れ、空気は舌の両脇から流れる(lateral release)
– 語末や子音の前では「ダークL」/ɫ/ となり、舌の奥が持ち上がる

図解
R:舌先は浮かせ後方に引き、唇は丸める。舌中央は凹む。


L:舌先を歯茎に当て、舌両脇から息が流れる。



練習法

  • 鏡で舌先が見えないように「red」を言う(R)
  • 舌先を上の歯茎に軽く当てて「light」を言う(L)
  • ミニマル・ペアを録音比較:rice / lice, right / light

2. 英語は「強弱のリズム」でできている

英語は強勢拍リズム言語と呼ばれ、強く発音する音節(stressed syllable)の間隔がほぼ等しいリズムを持ちます。

日本語はモーラ拍言語と呼ばれ、1拍の音の長さがほぼ均等なので、英語のリズムが苦手になりやすいのです。

例:banana
– 発音:/bəˈnænə/
– 最初と最後の a は弱化して /ə/
– リズム:弱 → 強 → 弱


弱形(weak forms)の存在
英語では、前置詞・冠詞・代名詞などの機能語は弱く短く発音されます。
例:
– I can go → /aɪ kən goʊ/ (canが/kn/に近く弱化)

– She was there → /ʃi wəz ðɛr/

練習法
– メトロノームに合わせて音読
– 強弱を意識して「意味のある単語=強く、機能語=弱く」

3. 母音は「口の形」ではなく「舌の位置」で決まる

英語の母音は、舌の高さ(high–low)、舌の前後位置(front–back)、唇の丸め具合(rounded–unrounded)で分類されます。

母音の種類は日本語の約2倍以上あるため、日本語話者は「同じに聞こえる音」を区別する訓練が必要です。

練習法

  • 鏡で唇の形を確認しながら単語を発音
  • vowel minimal pairs(例:ship / sheep, full / fool)を繰り返す

4. 破裂音は「息の爆発」

/p/, /t/, /k/ は破裂音(plosives)で、単語頭では有気音として発音されます。

英語では「息の有無」が意味を区別する要素ではありませんが、自然さに直結します。

例:
– pin → [pʰɪn](息が強く出る)
– spin → [spɪn](息は弱い)

練習法

  • 紙を口前に置き、pin と spin を発音して紙の動きを比較
  • 英語の音読時に子音直後の母音をしっかり出す

5. ネイティブ発音の秘密 ― 音の連結と変化

会話では音が連結(linking)、同化(assimilation)、脱落(elision)します。

連結
– go‿on → /goʊ wɒn/
– my‿apple → /maɪ jæpl/

同化
– good boy → /gʊb bɔɪ/(d→bに近づく)
– in Paris → /ɪm pærɪs/(n→m)

脱落
– next day → /neks deɪ/
– exactly → /ɪgzækli/(tが消える)

練習法

  • 文全体を録音し、単語と単語の間を滑らかにつなげる
  • 弱形・連結・同化を発音記号ベースで練習

6. 喉で作る「声門音」

英語には声門閉鎖音 /ʔ/ があります。

これは声帯を一瞬閉じて息を止める音で、イギリス英語の一部方言やアメリカ英語のカジュアル会話に登場します。

例:
– bottle → [ˈbɒʔl̩](イギリス)
– mountain → [ˈmaʊnʔn̩](アメリカ)

練習法

  • ため息を出す直前に喉を一瞬閉じる感覚を覚える
  • “uh-oh” の間の喉の動きが /ʔ/

7. 母音と子音の「ペア関係」

英語の多くの子音は有声音(voiced)と無声音(voiceless)のペアになっています。

無声音 / 有声音 / 例
p / b / pat / bat
t / d / ten / den
k / g / cat / gap
f / v / fan / van
s / z / sip / zip
θ / ð / thin / then
ʃ / ʒ / ship / measure

練習法

  • 喉に手を当てて振動の有無を確認
  • 無声音→有声音の順で交互練習(pat–bat, ten–den)

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この記事の理論を実践に落とし込むには、耳と口を同時に鍛える教材が有効です。

1. 『英語耳』シリーズ(松澤喜好 著)


2. 『Ship or Sheep?』(Ann Baker 著)

著者紹介

この記事を書いた人
  • アメリカ留学経験者🇺🇸
  • 名古屋大学大学院修了
  • 現役英語講師

X:@Atsushi_Eng29

Instagram:@atsushi_english29

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